距離

「議長」と彼女は彼の事を呼ぶ。
「艦長」と彼は彼女の事を呼ぶ。
 そういう風になったのはごく最近の話だ。以前は「ギル」と「タリア」だった。ギルバードが議長に、タリアがミネルバの艦長の職に就く事が決まった時に2人は別れた。互いに愛し合っていた。だからこそ別れたのだ。互いの為に。
 きっと二度と会う事は無いと思っていた。会わない事を信じていた。

「頼む、タリア」
 同じ艦に乗る事になった。タリアは艦長だから君に全てを委ねるしかない。艦の運営は議長の私は何も手出しできない。
 艦の運営は君に頼らざるを得ないが、個人的な面でも君に全てを委ねたい。タリア、君を別れてから私は穏やかにはいられなかった。別れてから改めて君の存在の大きさに気付いたのだ。不安な日々を送る、そんな私を救ってくれ。頼む…!

「議長」
 あなたの事をそういう風に呼ぶことが切ない。昔は「ギル」と呼べて、私のすぐ近くにいた。「ギル」と呼べたのは私だけ。
 でも今は「議長」と皆が呼ぶように呼ばなければならない。とても遠い存在になってしまったあなた。私の近くに戻ってきて。お願いだから…

「「もう一度、やり直そう」」


戻る