公私混合禁止令
戦闘が終わり、コンデショングリーンを宣言した。本来ならシフト明けになっている人間は、休む為に部屋に戻っていく。タリアは戦闘の報告書を作る為に、副長であるアーサーと話そうとしていた。その時だった。
「艦長。ちょっとお話したいことがあるんでね。部屋まで戻ってきてもらえないかい?」
モニターにギルバートが映った。シャワーの後なのか少し髪が濡れている。
「了解しました。すぐ伺います。アーサー、ちょっと待っててもらえる?」
タリアはブリッジを出て、艦長室へ向かった。パスワードを入力して部屋に入る。ギルバートはベッドの淵に座っていた。
「どうなされたのです、議長?」
「タリア、頼む。ちょっとの間私のそばにいてくれないか?」
実はギルバートは眠れないでいた。昔からそうだったのだが、ミネルバに乗ってから余計に眠れないでいたのだ。今までは睡眠薬を服用していたが、医者の処方なしには薬は飲めないのだ。軍医はいるが物には限度という物がある。
何故かギルバートには手を握ってもらうと良く眠れるという不思議な習慣があった。
だからギルバートは眠るまでタリアに手を握ってもらおうと考えていた。タリアその事を知っている。だから何も言わずにベッドの傍に座り、ギルバートの手を握った。
案の定、ギルバートはすぐ眠りについた。よほど落ち着くのだろう。
「昔から変わっていないのね…」
ギルバートの髪を撫でながらタリアはつぶやく。出会った頃からずっと変わっていなかった。容姿も性格もこの習慣も…タリアの表情は母親を連想させるものだった。
どれ位時間が過ぎただろうか?気付くとタリアもうとうとしていた。手は相変わらず握られたままだ。
“ビーッ!ビーッ!”
艦内連絡用の通信機のアラームが鳴った。タリアが出ると、メイリンが姿を現した。
「艦長。アスハ代表がデュランダル議長と面会を希望されています。議長にお伝え願いますか?」
「えぇ。少々お待ちくださるように伝えて」
「了解しました」
しかし、しばらくしてもギルバートは姿を現さない。タリアも戻ってこない。カガリとアスランがブリッジへとやってきた。痺れを切らしたアーサーの指示によって、メイリンは艦長室へと回線を繋いだ。そこで見た光景は…
「議長!早く起きて下さい!アスハ代表がお待ちですよ。手も離してください!」
「Z…Z…」
「議長っ!」
「z…もう少し…」
「いい加減にしなさい!ギルッ!」
えっ?!「ギル」って艦長議長の事ギルって呼んでいるのですか?!つうかこの2人の関係はなんなのですか?!ブリッジ中騒然としていた。
「…分かったけれど、もう少し…」
「はぁ(ため息)」
「なぁ、この2人の様子はあの人達に似ていないか?」
「あの2人って…?」
「ある意味最強のバカップル」
「あぁ。あの2人か。そうかもしれないな。でも意外な気がするな」
カガリとアスランがややあきれ気味に話している。
「あの2人とは?」
アーサーが問う。カガリが答える。
「先の戦争で三隻連合の一艦だったアークエンジェルの艦長とエースパイロットの事だ。あの2人は最強だったよ。年中イチャイチャしていてさ、見ているこっちのほうが恥ずかしかった」
「はぁ…」
そんな事を話していると、2人がブリッジへと入ってきた。モニターから見た様子と違い、2人ともキリッとしていた。
「あの2人もこれくらい公私がはっきりしていたらよかったんだけどな…」
カガリとアスランはそれぞれそう思いながら議長と話していた。
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