久しぶりに休暇が取れ、自宅に帰ったら電話が鳴った。少しいい予感がして、タリアは電話を取った。
WITH YOU
「今年のクリスマスは早く仕事が片付きそうだ」
電話口でギルバートがそう告げる。彼の声の後ろでは「早くして下さい、議長」と言う声が聞こえる。
「仕事が終わったら久しぶりに外で食事でもしないかい?」
「…解ったわ。終わったら連絡下さいね」
タリアはしばし考えてからそう言い電話は切られた。12月23日の夜の事だった。
「すまない、タリア。急に今日中にやらねばならない仕事が入ってしまった。今夜は君の元へ行けそうも無い」
「大丈夫よ。…えぇ気にしていないわ。それよりも仕事を頑張って」
すまない、と言って電話は切られた。タリアは受話器を置き深い深いため息を吐いた。12月25日の夕方の事だった。
「久しぶりに会えると思ったのだけれどね…」
タリアは1人自宅で食事を取っていた。近くの店で買ってきたものだが、ケーキだけはお手製のものだった。毎年必ずケーキを焼いてギルバートと食べていたのだ。
年末になると皆仕事で忙しくなるものだ。12月なんかは特に「師走」と言われるのだから致し方ない。
でもタリアはずいぶん長い事恋人のギルバートと会っていない。彼はしょっちゅう会議等に出向いていて、しかも一度行くとなかなか帰って来られなくなる。タリアの方も最近特務が入ってしまい家に帰ることが出来なかった。
食事を食べ終わっても彼女には何も予定が無かった。友人達はきっと家族や恋人と過ごしているだろう。一瞬実家に里帰りしようかと思ったが、実家までは遠く、着くのは明日になってしまうので辞めた。
しばらくはテレビの特番を見たり読書をしたりしたが、すぐに飽きてしまった。タリアは時計を見た。少々早いがもう寝る事にした。
ガチャリ、と鍵を開ける音がした。極力音を立てないように静かにドアが開けられる。
ドアを開けたのはギルバート。急いで仕事を終わらせ急いでタリアの家に来のだが、部屋に明かりは点いていなかった。
「…もう、寝てしまったのか?」
そう呟きながらギルバートは部屋の奥へ入っていった。リビングの電気は消えており小さなクリスマスツリーが豆電球に照らされていた。
テーブルの上には箱が乗っていた。大体10cm四方の箱だった。「Dear Gilbert」と書かれたカードがとめられている。
寝室へ入るとタリアが寝ていた。カーテンから漏れる月明かりに照らされたタリアの頬には何かが伝った後が残っていた。
「ギ…ル…」
彼女の夢に出ているのか、タリアは今自分の寝顔を見ている恋人の名を呟いていた。
ギルバートはふっと微笑み
「ちゃんと待っていた良い子にはプレゼントをあげよう」
そう言ってタリアの頬にそっとキスをした。タリアは一瞬起きそうになったが、すぐに規則正しい寝息を立てた。
「来年のクリスマスには一緒に過ごしたいものだ」
ギルバートはまた静かに扉を開け、鍵を閉めた。机の上の箱は変わっていた。
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