秋桜

 ※オーブは桜が秋口に咲くものとする

 9月の初め、ムウとマリューは並木通りを散歩していた。そこは桜が満開だった。
「私、cherry blossomが好きなの。淡いピンクが素敵じゃない?だからね、私のルージュはピンク色にしたの」
 マリューが言うのを聞いたムウは、誕生日にcherry blossomをあげようと思った。

 しかし、マリューの誕生日の頃にはもう桜は咲いていない。でも造花ではなく生花をあげたい、他の花ではなく、桜の花をあげたい…ムウは必死に生花をあげる方法を調べた。ムウの努力の甲斐なく、桜の生花を入手する方法が見つからないまま10月に入った。今日見つからなかったらあきらめて他のものをあげよう…ムウらしくないことを考えながら調べていると、面白いことを発見した。
「やっぱ俺は不可能を可能にする男だな」
 パソコンの前にあやしく笑うムウがいた。

 そして10月12日、マリューの誕生日が来た。この日は2人で外食をした。家に帰ってくるとムウがマリューに花束を差し出した。
「Happy birthdayマリュー」
「あら、コスモスの花束じゃない?まだ早いのに、どうして?」
 マリューは驚いていた。ムウは解説を始める。「マリューの好きなcherry blossomは日本では『桜』って言うんだ。コスモスは日本の言葉で書くと『秋桜』で、日本で今咲いている花なんだ。君に似合うと思ったから、取り寄せたんだ」
 わざわざ自分のために他国から花を取り寄せてくれた…マリューは感激してしまった。
「ありがとうムウ!今まで貰ったプレゼントの中で一番嬉しいものだわ。今年は最高の誕生日だわ」
マリューはムウに抱きついた。

 2人はベッドの中にいた。マリューはムウの腕の中でうとうととしている。
「マリュー」
 ムウに呼びかけられマリューは顔を上げる。そのとろんとした顔はよほど疲れたのか本当に眠そうだ。
「もう一つ、プレゼント」
 そういってムウは小さな箱を取り出した。マリューが中を見てみると、オパールの指輪が入っていた。とてもシンプルな指輪はマリューの白い指に似合っていた。
「結婚しよう、マリュー。絶対君を置いていかないと誓うよ」
マリューは何も言わずにムウにキスをした。
そして耳元で囁く。
「ありがとう、ムウ…」



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